大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)869号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人武並覚郎の上告理由一について。

原判決は、本件売買契約が被上告人の内縁の夫により代理権なくして締結されたものであり被上告人自身これに関与したことも追認したこともないことを理由として右契約は被上告人に対して何等効力を生じない旨判断したのである。原判決はこれに加えて、仮りに右契約が被上告人に対し効力を生じたとしても、という仮定の下に、その目的物とせられたものは物の一部であるからこれについて直ちに所有権移転の物権的効果は生じ得ない旨を判示し、いずれにしても上告人等は明渡義務を有する趣旨を説示したのである。それゆえ原判決には何ら理由にくいちがいその他所論の法令違反はなく論旨は理由がない。

同二について。

記録によると、本件訴訟の目的物として訴状及び昭和二六年九月五日附訴状訂正の申立書に表示されているところの建物部分は店舗一棟建坪一五坪の内北より二戸目間口一間半奥行約二間の(板囲いの部分)約三坪と記載されており第一審口頭弁論において当事者双方が判決を求め陳述し、また第一審判決が乙一号証等によつて被上告人の請求を認容し上告人等に対し主文のとおり明渡を命じた目的物が右建物部分(すなわち間口一間半の)であるのに、一審判決が主文第一項において右建物部分につき「間口一間」と表示したこと、換言すれば一審判決主文第一項に店舗の表示として「間口一間」としたのは「間口一間半」の誤謬であることは明白である。かような判決に対する控訴に基き控訴裁判所が控訴棄却の判決をするに際し右誤謬を民訴一九四条にいわゆる「明白ナル誤謬」と認めたときは判決理由中にその理由を判示しその主文中において一審判決主文中「間口一間」とあるを「間口一間半」と更正しても違法ではない。論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 高橋潔)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例